ビジネス中国語の定義とゴール設定
日常会話の中国語とビジネス中国語の違いは、語彙の専門性よりも「正確さ・礼節・合意形成のための言語運用」にあります。まず3か月で達成したい具体的なゴールを数値化しましょう。たとえば「30分会議で自分の担当部分を中国語で説明」「見積依頼メールを下書きから送信まで自力で作成」「週1回の取引先との電話を中国語で完遂」の3点です。
一般中国語との違い
・曖昧さを避ける言い換え力(比喩よりも定義と条件を使う)
・敬称・肩書・役割を意識した主語選択(我们/贵司/我方/贵方)
・合意の可視化(确认/同意/变更/截止/责任/风险 などの運用)
KPIの例
・メール:往復2通以内で要件が確定する比率70%以上
・交渉:代替案(Plan B)を中国語で2パターン提示
発音と語気:意味と印象を同時に整える
商談では聞き返しが増えるだけで信頼が揺らぎます。最初の2週間は、母音・子音・有気音/無気音、そして四声を徹底して整えましょう。同時に語気詞や文末のトーンを整えると、丁寧さと断定の度合いを調整できます。
印象を決める語気の型
・丁寧に提案:是否可以…? / 方便的话… / 麻烦您…
・穏やかに断る:恐怕不太方便 / 目前还不具备条件
・前向きに合意:没问题 / 可以的 / 我们这边确认一下就推进
肩書・呼称の基本
・会社/相手:贵司/贵方/各位同事 ・自社:我司/我方
・役職:总/经理/老师(社外の敬称)を文脈で使い分ける
90日集中カリキュラム
学習は「仕事で使う順」に並べます。読む→書く→話す→聞くの順ではなく、実務では「要件を通す順」に沿って訓練するのが近道です。以下の12週間プランは、平日30分×2、週末60分×2の想定です。
1〜4週:基礎の可視化
・発音徹底/最小文型(主语+动词+宾语、把/被の骨格)
・自己紹介・会社紹介・担当領域を60秒で暗唱
・メール定型:ご挨拶→要件→期限→アクションの4文で構成
5〜8週:タスク遂行の言い回し
・期限・数量・仕様の確認表現(截止日期/数量/规格/单价)
・資料送付とフォロー(见附件/请查收/如有问题请随时联系)
・オンライン会議の基本運営(今天的议题有三点… 结论是…)
9〜12週:交渉と合意形成
・代替案と条件提示(在A的基础上,我们可以…;如果…的话)
・リスクと責任の分担(风险/责任/赔偿/保密/验收)
・議事録要約(请允许我总结一下:第一… 第二… 此外…)
シーン別フレーズ最小セット
実務で頻出する5シーンの最小フレーズを決め打ちで用意します。フルセンテンスで覚え、語を入れ替えるだけで運用できるようにします。
営業・見積
・报价请参考附件,如需调整请告知。
・为了按时交付,需要您这边在周三前确认。
・如果订单数量达到X,我们可以给到Y%的优惠。
購買・発注
・麻烦确认库存与交期,是否可以提前到X号?
・样品收到后,我们会在两天内反馈测试结果。
・请按照合同条款开具发票并寄送。
カスタマーサポート
・给您带来不便,非常抱歉。我们已经定位到原因…
・为避免再次发生,我们采取以下措施…
・请您协助提供序列号与购买日期。
会議・プレゼン
・今天的目标是确认时间表与分工。
・先给大家看一下目前的进度和风险点。
・结论部分,我们有两个方案,请选择更合适的一种。
出張・来客対応
・我在大厅等您。如需车辆,请提前告诉我。
・行程方面,我们建议先参观工厂,再进行技术会议。
読み書き:メール・チャットの鉄則
文字コミュニケーションは最初に結論、次に根拠、最後にアクションを明示します。1段落3文を目安にし、語順を中国語らしく前置きにします。
件名テンプレ
・【请确认】合同第X条修改建议
・【通知】交期调整至X月X日
・【请求】提供最新报价与交期
本文テンプレ
・目的:为推进X项目,现就Y事项与您确认。
・结论:我们建议…/我们同意…/需要您协助…
・行动:如无问题,请在X日前回复/确认/提供资料。
話す・聞く:会議運営の型
会議では「冒頭の目的共有」「議題ごとの要約」「アクション確認」の3ステップをテンプレ化します。速さより、論点の分離と結論先出しが重要です。
進行フレーズ
・今天我们先花十分钟确认背景,然后进入方案讨论。
・最后我总结一下:行动项有三点,请各位确认。
ネゴでの言い回し
・在不影响质量的前提下,我们可以考虑降到X。
・如果交期必须提前,我们需要贵方提供…
・我们理解您的担忧,是否可以先做小规模试点?
語彙戦略:コア1000語+業界300語
無限に語を増やすのではなく、頻出の機能語・動詞・名詞を厳選します。汎用1000語で土台を作り、業界語を300語追加するのがコスパ最強です。
語彙の増やし方
・会議議事録や仕様書から高頻度語を抽出してカード化
・近義語をペアで覚え、使い分けを自分の言葉で1行説明
・动词+目的语のコロケーション(推进项目/控制成本/提高效率)
誤解されやすい表現
・可以考虑=OKの確約ではなく「検討可能」の柔らかい表現
・麻烦您=丁寧だが依頼の強度が高い。理由と期限を添える
・随便=ビジネスでは避ける(曖昧・無責任に響く)
文化・ビジネス慣習への配慮
言語だけでなく、意思決定プロセスや関係構築の文化差も理解すると、摩擦を減らせます。重要なのは、スピードと品質、価格の三角形のどこを重視するかを最初に揃えることです。
関係構築の基本
・初回は役割と権限をはっきり共有(谁负责/谁拍板)
・重要事項は中国語+日本語の併記で誤解を防ぐ
合意文書とリスク
・数量・交期・检验标准・赔偿・保密の5点を必ず明記
・会議後24時間以内に要約を送る(确认无误后执行)
・仕様変更は版本号で管理(V1.2→V1.3)
学習ツールと運用ルール
ツールは「少数精鋭」で役割固定します。辞書は語義と例文、コーパスで用例の頻度、音声はシャドーイング素材に限定。翻訳は草稿作成だけに使い、最終文は自分で書き直します。
単語・表現管理
・プロジェクト別の用語表(中/日/用例/担当/更新日)を1枚で運用
・チャット定型文テンプレを20本用意し、語を入れ替えて使う
・週次で「捨てる語」を決め、使わない語を棚卸し
音声練習の型
・30秒自己紹介/60秒近況/90秒進捗報告を録音→自己添削
・原稿→暗唱→キーワードだけで即興の順に負荷を上げる
・同僚や学習仲間と「60秒サマリー交換」を毎週実施
よくある落とし穴と回避策
・直訳の敬語:書き出しに感谢/麻烦/打扰を入れて柔らかく
・主語の欠落:我们/贵司/我方/供应商 など役割を必ず明示
・結論が最後:先に结论→依据→行动の順で固定
停滞期の突破口
・3週間同じ素材を回し、暗唱と要約で「使える化」
・会議1本を丸ごと書き起こし→自分の言葉で90秒要約
・「昨日使った3表現」を毎日ログ化して再利用
成果測定と次の一手
学習の成果は現場で測ります。月末のセルフレビューで、会議の発話回数、メールの往復回数、合意までの所要日数を記録し、翌月の重点を決めましょう。
指標の具体例
・会議で自分が述べた要約の回数(目標:3回/会議)
・メール往復回数の平均(目標:2往復以内で確定)
・交渉の代替案提示数(目標:毎回2案)